ときには医療スタッフの発言を無視する勇気も


医者や看護師は、平均的な患者さんができることを目標に掲げます。けれども、十人十色と考えれば、平均から外れる人だって本当はおおぜいいるのです。

たとえば、病院の食事は一人前をしっかり食べることが前提になってしまいがちですが、もともと食が細くて朝食は小さなおにぎり一個しか食べない、あるいはコーヒーしか飲まない、という人もいます。

私の友人の医師の例ですが、菜食主義者で一日に二個の玄米おにぎりと野菜を少し食べるだけで、元気に仕事もスポーツもしているという人もいます。

このような人に朝食の一人前をすべて食べろというのは、その前提からして無理な話です。

家にいるときは、「」れ以上食べると、お腹が痛くなるから」と上手に加減して食べていた患者さんが、入院した途端、医者から食事をもっととるようすすめられ、以来腹痛がとれなくて困った、医者に怒られるのを覚悟で食事の量を元の少ない量に戻したら、何もしないのに痛みが治まった、という笑えない話もよく聞くくらいです。

「これ以上食べられない」というのは、体が発している「しばらく食べ物を入れてくれるな。消化しきれないよ」という危険信号のケースもあります。その信号を無視して食べ続けるほうが、体には危険なこともあるのです。

「寝ているだけでも、基礎代謝があるから一日一〇〇〇キロカロリーは最低必要だ」と栄養学的にはいわれていますが、私の経験では、ほとんどベッドで過ごしている病人は、もっと少ないカロリーでも十分生活していけるように感じます。

なかには、 一日に六OOCCの果汁しかとらないという人がいましたが、それでも元気で何ヵ月も病院の中を歩き回っていました。しかも、そんな患者さんはひとりではなく何人もいたのです。

人間の体は、入ってくる食事量が少なくなると、それなりに工夫して、 一〇〇パーセント栄養を吸収しようと努力するのでしょう。