肉食過多は肉体と精神の両方をむしばむ


こんな興味深い実験もあります。

インド国立栄養研究所所長だったマッカリソン博士は、ネズミに異なった餌を与え、それぞれの健康状態を調査しました。

一〇〇〇匹ずつ三つのグループに分け、それぞれのグループに別の餌を与え、飼育したのです。

一つ目のグループは、長寿地域の食生活を模して、穀類と野菜を与えます。

二つ目のグループには、インドの一般的な食事、すなわち穀類、肉、香辛料を与えます。
そして、三つ目のグループには、西洋食(肉、バター、チーズ、自砂糖)を与えました。

さて二年七カ月(人間の年齢で六〇歳ぐらいに相当)経過後、ネズミを解剖して、健康状態を調べました。

その結果、穀類と野菜を与えた長寿食のグループは、 一匹の例外もなく、健康な状態でした。

それに対し、二番目のインド食グループでは、胃腸障害、貧血、肝炎、腎炎、脱毛などが起こっていました。

そして、二番目の西洋食グループは、病気が頻発しているばかりでなく、何十匹かがいなくなっていたのです。最初は「どこかに逃げたのか?」と思われたのですが、残りのネズミの腸の内容物から、ネズミを食していたことが判明したのでした。

つまり、このグループのネズミは、たっぷり高タンパク質の餌を与えられていたにもかかわらず、共食いをしていたということなのです。

この結果は、食物が肉体と精神の健康をいかに左右するかということを端的にあらわしていると思います。

一般的に「粗食」と思われている穀・菜食が健康食であり、また、タンパク質の供給源とされている肉や乳製品が、実は精神と肉体に病気をもたらす不健康食であったということなのです。

肉食がどんな結果をもたらすかという生き証人は、欧米の先進国の人々です。

彼らの多くが肉食過多のために、ガンをはじめ、血管、心臓病やアレルギー性の疾患、精神病など、いわゆる「文明病」に悩まされています。戦後、日本でも食生活の欧米化にともなって、これらの国々と同じような病気が激増しています。

先にも指摘したように、もともと穀・菜食、そして魚食民族である日本人に、肉食はなじみません。

ですから、肉食によって受けるダメージは欧米の人々よりもはるかに大きいのです。戦前はほとんどみられなかったガン、脳疾患、精神病などが急速に増えているのはそのせいです。昨今、突然「キレる」といわれる子どもたちにしても、生まれたときから欧米化された食事をしている世代です。

肉食をやめるだけでも、日本人の健康状態はかなり改善されるはずです。