放射線と発がんの関係

 

放射線を被ばくした健康障害には「急性影響」と「慢性影響」がありますが、慢性影響の主たるものは発ガンリスクの増加です。

また、放射線のDNAに対する作用には、「直接作用」と「間接作用」があります。

直接作用では、非常に強いエネルギーの放射線が細胞内のDNAを直接切断してしまいます。

一方の間接作用では、放射線が細胞内の水分子を「放射線分解」という反応で電離分解し、「ヒドロキシルラジカル一や「水素ラジカル」といつた活性酸素を発生.)その結果、DNAを問接的に傷つけます。

放射線による発ガンは、その他の発ガンと同じく、活性酸素が関係することが最新の研究で明らかになりました。

放射線が人体の60%を占める水を電離分解し、活性酸素を産生。この活性酸素が、DNAを傷つけて発ガンの原因になるのです。

また、半減期がおよそ20時間と長い「高分子ラジカル(長寿寿命ラジカルこという活性酸素も、放射線被ばくで発生することが発見されています。

これらの活性酸素は抗酸化物質により消失し、突然変異と細胞のガン化の頻度が低下することも明らかにされています。

被ばく線量が多くなるとガン発生率も高まる傾向にあります。放射線影響研究所では、日本人が被ばくした場合の生涯リスクを推計していますが、200ミリシーベルトの被ばくをした場合、年齢が若いほど発ガンのリスクが高いそうです。

これまでに放射線で誘発されたことが明らかなガンの例を挙げてみます。

体の外から放射線を浴びる「外部被ばく」については、被ばく後2~3年から15年くらいまでで、白血病のリスクが上昇します。また、被ばく後20年目以降に「固形ガン」のリスクが上昇します。

固形ガンとは白血病以外のほとんどのガンのことで、胃ガン、肺ガン、直腸ガン、肝ガンなどさまざまですが、被ばくするとこうした固形ガンの発ガン頻度が上昇します。

被ばくした人に見られる固形ガンは、被ばくしていない方々に見られる種類と変わりはないのですが、ただそれがより高い頻度で発症します。すなわち、放射線が自然発ガンを促進させると考えられるわけです。

外部被ばくも怖いのですが、体の内部から被ばくする「内部被ばく」は、さらに危険です。

放射能を帯びたチリやホコリ、あるいは水や食べ物が鼻や日から入ると、それらが体内で放射線を放出することで内部被ばくします。

内部被ばくでは、飛距離の短いα線β線を含むすべての放射線で被ばくしてしまいます。これらは体外の測定装置まで届かないため、検出できません。

内部被ばくによる発ガンの過去の事例としては、「ラジウム」による骨肉腫があります。

夜光時計の文字盤に蛍光塗料を塗る仕事をしていた女性従業員たちが、筆先を紙めながら作業を続けた結果、蛍光塗料に含まれるラジウムが骨に沈着して発生したものです。

ウラニウム鉱山での「ラドン」と粉塵の吸入による肺ガン、「トロトラスト」を含む造影剤の注入による肝ガン発生の例もあります。そして、チェルノブイリ原発事故では、核分裂生成物の「ヨードー31」を体内に取り込んだ子どもたちに甲状腺ガンが発生しました。

福島第一原子力発電所の事故でも、内部被ばくの危険性は否定できません。

とくに、骨に定着しやすく、半減期が約30年と非常に長い「ストロンチウム90」による骨肉腫の発生と甲状腺に集まる性質を持つヨードー31による甲状腺ガンの発生の危険性は、もっとも心配されます。