いたわりの気持ちを持ってグチの聞き役になろう


重病人を抱える家族を励ますのはなかなかむずかしいものです。大変な状況に置かれた家族を目の前にすると、周りで見守る人は、どうしても「あれもこれも教えてあげなくては」と焦るものですが、焦りは禁物です。

焦れば焦るほど、「こんなことをしていたらダメじゃない」という批判的な言葉や、「もっとこうしなさい」という教育的な言葉が出てきやすくなります。

でも、こういった言葉では、看病疲れで余裕のなくなっている家族の心になかなか届きません。しかも、親切に言われれば言われるほど、家族は「こんなに親切にあれこれ言ってくれているのに、素直にありがたいと思えない自分は、なんていやな人間なんだろう」と落ち込んでしまうものです。

こんなときには、「なんとかしてあげたい。あれもこれも……」というはやる気持ちをちょっと抑えながら援助しましょう。家族にとってありがたいのは、「心配しているんだよ。いつでも力になるからね」と思っているいたわりの気持ちそのものです。

といってもハ何かしないではいられない方には、たとえば次のようなことをおすすめします。

●ともかく、話(グチ)の間き役になりましょう。このとき、相手から求められない限りは、意見やアドバイスはあまりしないほうがベターです。下手に意見をすると、かえって警戒されてしまうことがあります。ただ聞き役になっているだけでも、十分相手の心を和らげる力があります。
●「何もできなくてごめんね。でも、いつも心配しているから」という言葉もいいですね。
●「何かあったら、いつでも飛んでいって手伝うから、遠慮しないで、絶対に声をかけてね」と話しておくと、相手が本当に支えてほしいと思ったときに、声をかけやすくなります。そして、天フは、そっとしておいてほしい」と思っているときでも、周りの人々の思いが負担になってしまうことがありません。
●「患者さんのことは、心配してくれる人がたくさんいるから大丈夫よ。でもあなた方ご家族が心配」という言葉も、普段なかなか介護ぶりを評価してもらえないことの多い家族にとって、大きな支えになります。
●励ましの手紙、寄せ書きなども喜ばれます。たいそうな手紙を書かなくても、きれいな絵葉書にひと言添えられているだけでも、十分気持ちは伝わるものです。
●外出好きなご家族であれば、気分転換に、散歩や食事に誘うのもいいでしょう。

「素晴らしい看病のやり方」を教えることや、通り一遍の慰めの言葉よりも、「何て言っていいかわからなくて」という心から出たひと言や一粒の涙のほうが、心に響くものです。相手には、まず心の言葉で語りかけてください。