がん患者の「ちょっぴりのがんばり」を応援していく


病院で患者さんが、医者や看護師から過大な目標を突きつけられて落ち込んでいるときこそ、家族や友人の出番です。せめて家族や友人が味方になってあげないと、患者さんには逃げ場がありません。

こんなときには、医者や看護師が決めた「目標」をスッパリ捨てることをおすすめします。専門家が「正しい。これくらいできて当然」ということを無視するのは、とても勇気のいることです。

しかし、病気をして疲れてしまっているときこそ、他人のペースに合わせるのではなく、本人なりのペースを大切にしてあげてください。そして、患者さん本人のできたことをよく見つめてみてください。

「クタクタになりながらも、昨日より一歩だけ余分に歩けた」

「食べ物の味がまったく感じられなくて、食事をする気力がない。でも、生ジュースは二OOCC飲めた」

「歩くのは無理だが、がんばって一時間だけベッドの上に座っていた」

ほら、あなたの大切な人はとてもがんばっているでしょう? それでいいのです。医者や看護師が認めてくれなくても、あなたの大切な人はがんばっているのですから、どんどんほめてあげてください。

それでも、なかなか進まないリハビリや食事を、ただ「やりたくなるまで、何もしないでいいよ」と見守っているのも周りの人にとってはつらいもの。

こんなときは、本人が簡単に達成できそうな「小さな目標」を立てて一緒にがんばってみましょう。

食事ならば、食欲をそそるような工夫を凝らしてみることが大切です。食事が進まない人を前にすると、私たちはついついあれもこれも、ひと口でも多く食べてもらおうとたくさん並べてしまいます。

しかし、これでは逆効果。それよりは、大きくてきれいな皿にほんの少し料理をよそってみましょう。できるだけ、見た目もきれいに、可愛らしく盛りつけてください。

香りのいいもの、旬のもの、新鮮なものならもっと上等です。なるべく、五感を刺激するようなメニューがいいですね。

病院食の場合でも、家から持ってきた″素敵なお皿″に食事を盛りつけてみるのもいいでしょう。

そうそう、ゆめゆめ「せめてもうひと口食べてほしいから、気持ち余分に盛りつけよう」と欲張ってはいけません。

また、食べなさいと強要するのではなぐ、周りにいる人は、本人を無視するくらいでちょうどいいのです。そして、なるべくおいしそうに同じものを食べてください。

「あんまり食事の進まない人を前にしてごめんなさい。あらあ、でもこれ、ほんとにおいしいわ。やっぱり旬のものは最高ね」

なんて、できるだけ楽しく盛り上がってみましょう。

そうすると本人も、楽しい気分につられて「きれいでいい香り。…Iこのくらいの量なら食べてみようかしら」と思うかもしれません。もしひと皿食べられたら、すかさずほめること―

「今日はすごいじゃない―ン」んなに食べられたわよ―よかったら、もうひと口いかが?」

と、ここで初めてさらにもうひと口をすすめるのです。

リハビリなども同じです。医者は、「隣の病棟まで歩けるはずだ」と言うかもしれませんが、いつも病室の端までしか歩けない人にはこう言ってみましょう。

「部屋から、 一歩だけでも外に出てみない?」

そして、 一歩でも余分に歩けたら、

「昨日より、 一歩進歩したわ。大丈夫―ちりも積もれば山となるもの。 一年後には三六五歩以上歩けるようになっているわ」と声をかけてみましょう。病気のときこそ、できていないことより、できたことを見つめる姿勢が大切です。