その人らしい生き方を支える
最後に、私が思うのは、「最高の療養生活を受けるには、自分の生き方にいちばん合った場所にいることだ」ということです。
最後まであきらめずに治療したい人は、どんどん治療をすすめてくれる病院。
残された時間を有意義に過ごしたい人はホスピス。家にいることがいちばんという人は在宅医療。
なるべく家族と一緒にいたい人は、設備の整った遠くの病院より、少々不使でも近くの病院……。
療養のための病院の環境は、上を見ても下を見てもきりがありません。
「病人の生き方の根本的な部分と、今かかっている病院の方針がどうしても合わなければ、すみやかに転院し、ある程度納得できるところを選んだら、自分なりにも満足のいく療養生活が送れるように努力する」――それが、患者さんが心地よく、自分らしい医療を受けるコツなのかもしれません。
ひとりひとり生き方はさまざまです。どんな生き方がよくて、どんな生き方が悪いという決まりはありません。
「ありがとう」と感謝して穏やかに逝くことだけが、いい人生ではないのです。
「死にたくない!」と最後まで努力する人生も、死ぬのが怖くて怖くてメソメソしながら過ごす人生も、何かをやり遂げていく人生も、どんな人生もその人なりの一生懸命な生き方のあらわれです。
どんな人の人生も、最後ぐらいは他人の物差しで計って評価するのではなく、百点満点をつけたいものです。
そして、その人らしい生き方を支えることが、家族や友人の最大の役割ではないでしょうか。