介護援助を申し出るときに注意したいこと


病人を抱えたご家族に援助を申し出るときには、こんな配慮が必要です。

たとえば、「お家のことは私が全部面倒をみるわ。あなたは病人にずっとついていてあげて。今しか看病できないんだから」

という言葉。とってもありがたいのですが、家族によっては追い詰められてしまうことがあります。

というのは、家族も二四時間態勢の介護で疲れていて、かえって患者さんのそばにいるほうがつらいときもあるからです。親兄弟や恋人でも二四時間ずっと顔をつき合わせていると、なんだかうっとうしくなることがありますよね。それと同じです。

しかも、病人は余裕がありませんから、 ついついわがままも出やすい傾向があります。そんなとき病人のそばに二四時間ずっといるのは、結構忍耐がいります。

そんなところへ、アフしかないから、ずっとそばにいてあげなさい」と言われてしまうと、家族は逃げ場がありません。何か援助の手を差し伸べたいと思ったときには、

「お手伝いしたいけれど、どうしたらいい?お家の裏方を手伝おうか?それとも、 つき添いを替わろうか?」

と選択のゆとりがぁる申し出をすると助かるように思います。同じような理由から、

「仕事と介護を両立させるのはきついんじゃないの。いっそ仕事を辞めて看病に専念したら」というアドバイスも避けてください。

相手にとって、仕事がいい息抜きになっている場合があります。そんな場合、仕事を辞めて看護に専念してしまぅと、ストレスがたまり、ゆとりがなくなるので、患者さん本人にもいい影響を与えません。

それに、万が一、患者さんが、不幸にもお亡くなりになられたとき、仕事や趣味を持っている方のほうが、悲しみの気持ちを紛らわせやすいものです。カルチャーセンター通いや友人とのカラオケも大いに結構。

一時でも心が解放されて自分に戻れる時間があることは、介護を続ける活力源になります。病人を抱えた方が仕事や趣味を今まで通りに続けることを、ぜひ温かく見守ってあげてください。

「病人には代わりについていてあげるから、たまにはあなたも看病を休んで、自分の好きなことをしなさいよ」

そんなひと言は、病人を抱える方への最高のいたわりになります。

私事になりますが、母を家で介護しているときに弟と妹が看病を替わってくれたことがありました。久しぶりに自由になったわずかな時間で外出した私は、空の青さや木々の緑を肌で感じるだけでホッと和みました。

帰り道に見つけた百円ショップの品々でさえ、宝物のようにキラキラ輝いて見えたほどです。そのとき、「息抜きって、こんなに小さなことでも十分なんだなあ」としみじみ実感しました。

▼重症の患者さんは、見舞いをきらうことが多い。断りにくい見舞いは、医療スタッフにも協力してもらって避ける。
▼病人を抱える人には、直接的な手伝いができなくても、話を聞いてあげることだけでも、十分な支えになる。
▼看病にあたっている人への援助の申し出は、相手の状況と気持ちに合わせること。